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見たことのない、
お米が出てきた。
速く削るはずだった。それなのに、平べったいお米が現れた。
成功か失敗かも分からない――その違和感を、観測する。
速く削るはずが――
見たことのないお米が出てきた
ドクター・トラエラじゃ。
今回の観測対象は、2015年に動き出した醸造用精米機の開発。
掲げた目標は「従来より速く削る」、ただそれだけじゃ。
ところが物語は、目標の先で思わぬほうへ曲がっていく。
誰も狙うておらん“平べったい米”が現れたのじゃ。
わしが見たいのは、そこで彼らが何を考えたか...そこよ。
THE INCIDENTトライ&エラー発生
サタケの原点、醸造用精米機開発でのトライ&エラー
醸造用精米は「食べる米」の精米とは違うてのう、「米を球体に削り上げる」それが常識じゃ。
日本酒用精米機を原点とするサタケは、2015年、その醸造用精米機の性能改善に挑む。
目標は処理能力の向上、つまり「従来より速く削る」ことじゃった。
YOUR TURNどこを疑う?
速くしたい。
でも、速くならない。
精米はできる。品質も悪くない。じゃが、処理能力が届かん。
評価・修正・再試験――その繰り返しの中で、チームは原因を一つずつ探っていった。
さて、君ならどこを疑うかの?
- 疑い1 お米にもっと圧力をかけるお米同士を強く押し付ければ、 もっと速く削れるのでは?
- 疑い2 お米を削る砥石の回転を速くする砥石がお米により強く当たることで、お米に加わる衝撃が大きくなり、精米速度が向上するのではないか。
- 疑い3 お米をたくさん流す一度に処理する量を増やせば、能力も上がるのでは?
- 疑い4 精米する空間を狭くするお米が砥石に当たる回数を増やせば、 効率が上がるのでは?
- 疑い5 砥石の粗さを変える砥石の表面を粗くすれば、削る力も強くなるのでは?
- 疑い6 砥石を増やす削る場所を増やせば、 処理能力も上がるのでは?
- 疑い7 精米機の台数を増やす2台で削れば速いでしょ?
さあ、君ならどこを疑うかの?答えを決めんでええ。まずは頭の中で、想像してみてほしいのじゃ。
この続きで、開発チームがどこへたどり着いたか、わしと一緒に追ってみようかのう。
THE ENGINEER当事者インタビュー
品質か、速度か。
その二択を超える挑戦。
観測者ドクター・トラエラが、実際にこのトライ&エラーを行った当事者に話を聞いた。
どんなトライ&エラーが繰り広げられたのか、聞く前からワクワクするのう!
まず始まりの部分じゃが、今回の開発、何を目指しておったのじゃ?
新しい醸造用精米機の開発です。
求められたのは、
- 精米品質の向上
- 精米時間の短縮
でした。
しかし、この二つは簡単には両立できません。
- 品質を優先すれば時間がかかる
- 速度を優先すれば米が傷つく
なるほどのう。品質は守る。
そのうえで、もっと速く削りたいというわけじゃな。
それで最初に打った手は何じゃ?
精米部へ入れるお米の量を増やしたり、精米部を狭くしたり、出口を狭くしたり。
とにかく米同士を強く押し付ければ、速く削れると考えたんです。
まずは圧力からのアプローチじゃな!それで結果はどうじゃった?
確かに速くなりました。
ただ、速度は上がったのですが
ほう……速くはなったが、品質との両立はできなかったわけじゃな。
砥石の回転数を上げて、もっと強く削ろうとしたんです。
次は衝撃力か!それはうまくいったかの?
いえ。またお米が割れてしまい、品質が下がりました。
圧力でもダメ。衝撃でもダメ。同じ壁にぶつかったんです。
なるほど……圧力でもダメ。衝撃でもダメ。
行き詰まったわけじゃな。
なんと!?前提を疑うとはどういうことじゃ!?
それまでは、回転数や圧力は変えても、砥石そのものは変えないのが当たり前でした。
でも私たちは思ったんです。
ほほう!力ではなく切れ味か!
ダイヤモンドに次ぐ硬さを持ち、高い切れ味が期待できました。
それで、今度こそ手応えはあったかの?
ありました!!精米速度が向上し、米の割れも低減。
品質と速度の両立に、初めて近づけたんです。おおっ!ついに前進じゃのう!
そこでさらに、削る力が強い粗いロールや、優しく削れる細かいロールを用いて、
砥石の条件を変えて評価を続けました。
むむっ!そこで何か起こったんじゃな!?
なっ、なんと!どんな米じゃ!?
私は見たことがない形でした。
思わずメンバー同士で顔を見合わせましたね。
その時の第一印象はどうじゃった?
正直、「なんだこの米は……」と思いました。
少なくとも、成功には見えませんでした。それは失敗と思わんかったのか?
普通ならそこで終わっていたかもしれません。
でも、どうしても気になったんです。
ほう……。それでどうしたんじゃ?
調査を進める中で、社内技術者からこんな言葉がありました。
「これ、扁平になっているじゃないか。」扁平!?
その言葉をきっかけに調べると、
1993年の「扁平精米理論」にたどり着いたんです。※1993年 日本醸造協会誌等で発表された扁平精米理論(齋藤富男氏ら提唱)に基づく。
扁平精米は、雑味の原因となるタンパク質を効率よく除去できる可能性がある理論でした。
しかし当時は、実現する技術がありませんでした。
なんと……。見たことのない米が、昔の理論につながったのじゃな。
そうなんです。そこで改めて評価を進めました。
すると、
- 精米品質は良好
- 狙った品質へ到達
さらに、同じ品質なら削る量を少なくできる可能性も見えてきました。
ということは……
はい。
品質を維持しながら、速度も向上できる可能性が見えてきたんです。開発当初から追い続けていた、あの課題です。
なんと!!
品質か速度か。
その二択だと思っていたものが……
実はそうではなかったんです。
私たちは考えました。「扁平精米を実用化できないか」
※「真吟」「真吟精米」は株式会社サタケの登録商標です。
最後に一言で表すなら、真吟とは何じゃ?
真吟は、最初から狙って生まれた技術ではありません。
- 丸く削れなかった米
- 見たことのない形の米
「品質か、速度か」―― 従来は、その二択じゃった。
じゃがこのトライ&エラーの結果、品質向上と速度向上を同時にやってのけた。
そしてさらに、新しい精米技術「真吟」へと繋がったのじゃ。
前提を疑う×想定外を捨てない
=真吟精米誕生(全国100以上の酒蔵・150銘柄以上で採用)
真吟について詳しく知るTHE CRAFT学び
このトライ&エラーから持ち帰った、4つの学び。
- 学び1
- 前提を、疑う。「変えないもの」と思っていた砥石こそ、答えじゃった。
- 学び2
- 想定外を、捨てない。狙っていない結果にこそ、次の技術の種がある。
- 学び3
- 「なぜ」を、追い続ける。失敗か成功かより先に、理由を知りたいと思えるか。
- 学び4
- 過去の理論に、学ぶ。忘れられた1993年の理論が、目の前のお米を意味づけた。
この“なぜ?”を、次は君の目で観測せよ。
読んで終わりでは、もったいないぞ。
わしがここまで観測してきた「自分で考え、試し、検証する」おもしろさと、
「失敗を責めず、挑戦できる」文化は、サタケ開発現場インターンシップで、
君自身の手で体験できる。
手を動かし、条件を変え、現象の変化を確かめる。
技術者と一緒に仮説を立て、検証する。
――観測者ではなく、当事者として。